2020.02.01
年末年始から年度末までは、処理業者の繁忙期が続きます。実はこの繁忙期には、知らない間に法令違反に巻き込まれてしまっているということがあり得ます。
今回は運搬業者の繁忙期、車両と人の許可関係を確認していきます。
運送業界の状況
同じ運送業界では、引っ越し業者のトラックは通常、青ナンバー(軽自動車は黒ナンバー)ですが、3月・4月は白ナンバーの引っ越し業者も現れるそうです。 <img
これは、繁忙期の特例によるものです。引っ越し業界は繁忙期になると極端に依頼が増え、需要に対して業界全体でも支えきれないほどだそうです。だからといって、繁忙期のためだけに多くの車両を確保すると、維持コストがかかるので採算が合わない…。
そこで、繁忙期のみレンタカーなどの使用が認められるようになり(事前申請などが必要)、短期のアルバイト雇用なども駆使して何とか繁忙期を乗り切っているのだとか……。
引っ越し業界の豆知識を聞いて、廃棄物業界は繁忙期にどうなのだろうか?と疑問に思いませんか?処理業者も繁忙期には何らかの特例を受けて対応することができるのでしょうか?
例えば、日頃出入りしている収集運搬の車両や運転手が突然変わることがあるかと思います。同じ会社の別車両、ドライバーであれば全く問題ありません。でも、その車両、ドライバーが繁忙期の一時しのぎで呼んだ応援だったらどうでしょうか?
残念ながら、廃掃法上の業許可に関して、このような特例はありません。必ず許可を受けた車両を使用して収集運搬を行う必要があります。ですので、その運転手や車両が当該許可業者からみて「契約関係もない全くの他人」「許可外の車両」であれば法違反となります。
レンタカー、レンタリースで許可取得は可能?
「(特別管理)産業廃棄物収集運搬業の許可の申請などにおけるレンタル車両の取扱いに関する調査結果報告(平成27年6月)公益社団法人 全国産業廃棄物連合会収集運搬部会運営委員会」によれば、88%の自治体が「レンタル車両を事業の用に供する施設とすることができる」と回答しています。
しかし、レンタル車両が認められている自治体のうち6割以上が賃貸借期間に関する条件を設けており、期間の短い自治体では半年以上、長い自治体では5年以上ですが、1年以上の期間レンタルすることを条件としている自治体が最も多いという結果です。
レンタル車両の許可取得が認められつつも、「繁忙期のみ利用」といった一時的なものを想定しているわけではないようです。
そもそも、この調査で問われているのは、許可申請時におけるレンタル車両の取扱いです。
新規申請及び変更届出には一定の審査期間があります。たとえ賃貸借期間の制限がなかったとしても、繁忙期にのみレンタル車両を加えて変更届出をし、レンタル期間が過ぎたらレンタル車両を削除して再度、変更届出を行うという手順は、現実的ではありません。
そのため、繁忙期にのみ車両を増やすという手段は制度上、行えないと考えるのが妥当なようです。
ドライバーの派遣は可能?
一方で、車両はあるのでドライバーさえ確保できればいい、という場合はどうでしょうか?この場合も、「とにかくドライバーを確保したい」とだけ考えていると、「名義貸し」の状態になるような人の集め方をしてしまう場合があります。該当する条文(名義貸しの禁止)は次の通りです。
ある期間だけ、どうしても人手が足りず、個人事業のトラックドライバーに依頼し、自社の作業衣を着せて自社トラックに乗ってもらう、という行為は名義貸しにあたる怖れがあります。
廃棄物処理法上の業許可は、法人もしくは個人に対して与えられるものであって施設に与えられるものではありません。
会社として許可を持っていても全くの他人が仕事をするのであれば、それは許可の範囲外になり無許可営業になります。正規・非正規にかかわらず、指揮監督が徹底できる雇用関係にあることが最低限の条件といえるのではないかと考えられます。
以上を見てもわかるように、運搬会社の人手不足、車両不足に関してはすぐに解決することは難しいというのが現実です。
そのため、排出事業者としては、余裕をもって回収の依頼をすることが求められます。
ある大手排出事業者ではこうしたリスクを防ぐため、初めて回収に来るドライバーなどに対し免許証や車検証、任意保険のコピーを提出させています。
また、運搬会社が許可のない車両で回収していないか、ドライバーも会社の人間なのかを確認するためにも、回収の立ち合いは確実に行う等、繁忙期だからこそ、より徹底した管理が求められます。