2016.12.29
※2016年12月29日執筆時点の情報です。
シリーズのその他のコラムは以下からご覧ください。
第2回:立入検査で法律違反が発覚したらどうなる?排出事業者の罰則
第3回:些細なミスでも本当に罰則が科せられるの?万が一の対応方法
処理業者にお任せが1番怖い!~事例:大学職員3名が逮捕~
法律上の責任は排出事業者にあり!
「廃棄物の処理は、処理業者にお任せしている」こんな言葉を言ったこと、聞いたことはありませんか?
私はコンサルタントとして、日々、廃棄物管理の実務現場に足を踏み入れると、「お任せしている」は本当によく聞く言葉です。しかし、法律上で規定されている「委託」と排出事業者が抱く「お任せ」のイメージに大きな乖離があることも少なくはありません。多く事業者が「廃棄物に関することは、業者さんの仕事」という「イメージ」をもっているように思えます。さらに、「廃棄物処理法違反」というものは、悪意のある排出事業者か、廃棄物を日々大量に取扱う処理業者の世界の言葉だと考えている節があるようです。
そのため、法律上は排出事業者に課せられる責任があるにもかかわらず、どこか他人事になっていて「当社は大丈夫」という根拠のない自信につながっている場合もあります。
2016年2月 同志社大学で3名の逮捕者
しかし実際には、排出事業者に重い責任があります。
2016年の2月に、同志社大学から排出される一般廃棄物が不適切な取り扱いをされていたとして、3名の職員が逮捕されました。大学当局は2月19日にホームページで事実関係を公表しています。
廃棄物処理に係る法令違反及び第三者委員会設置について(ご報告)
1 月 19 日に(株)同志社エンタープライズ社の社員4名(うち代表取締役社長は学校法人同志社法人事務部長の兼務、また同社総務部長は同志社大学から出向)が廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反(無許可での廃棄物の収集・運搬) の疑いで逮捕され、同日、大学施設部、法人事務部長室も家宅捜索を受けました。2 月 9 日に 20 日間の勾留を経て「処分保留」で 4 名の逮捕者全員が拘束を解かれましたが、18 日には無許可業者への委
託による同法違反の容疑で同志社大学職員 3名(施設部長、今出川校地施設課長、同課施設係長) が逮捕されるとともに、再び学校法人の施設が家宅捜索を受けました。
(中略)
今出川キャンパス及び学生寮等の廃棄物処理にあたり、 (中略) 2005 年のエンタープライズ社設立以前にも指摘を受けていたようですが、現場で引き継ぎが十分になされず、また、清掃業務がエンタープライズ社に移管されたこともあり、違反状態が長年にわたって放置・見過ごされることになりました。 (後略)同志社大学公表メッセージより
報道によると、紙くずなど900gを不適正に委託したとされています。大学は、京都市の業許可を得ていない同志社エンタープライズ社に処理業務を委託し、エンタープライズ社も許可を得ていない業者に業務を再委託したのです。下請けなどへの「再委託」は法律で禁止されている行為です。
●事件の流れ
「お任せ」をしていて、不法投棄等の不適正処理や無許可業者への委託が発覚したときに、逮捕や罰則(本件はまだ確定していないようですが)に課せられるのは、「任せた側」「任された側」両方であることがよくわかる事件です。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理する」とされており、排出事業者の責任が非常に重くなっています。
そのため、今回は同志社エンタープライズ社には無許可で収集運搬の業務を行った”無許可営業”という罪で、それと同時に、排出事業者である同志社大学には、”無許可業者への委託”という罪で、複数の逮捕者が出てしまったわけです。
不法投棄等の不適正処理が起こった場合に、想定される責任の取り方
許可業者への委託でも求められる排出事業者責任
先述の事例は、無許可業者への委託によって排出事業者が逮捕されました。「さすがに、無許可業者には委託しないよ!」という声が読者の皆様から聞こえてきそうです。
許可業者に委託している廃棄物の担当者の方から「行政が審査をして許可を出したのだから、万が一不適正処理があっても行政に責任を持ってほしい!」「行政が認めた業者に委託をしているのだから、自分たちに責任が問われるのおかしい!」とご意見をいただいたことがあります。
確かにお気持ちはよく分かります。ただ廃掃法はそのようなつくりになっていないのです。許可業者に委託していても、不適正処理の責任を求められる可能性が大いにあります。
不法投棄廃棄物の除去費用の負担を命じられる”措置命令”
例えば、許可業者に委託をし、不法投棄が起こった場合はどうなるのでしょうか?
不法投棄された廃棄物は”行政代執行”として行政によって除去されることもありますが、これは最終手段です。その前に「排出事業者責任」にのっとって排出事業者へ責任追及が行われます。しかも、その代執行の費用はできる限り排出事業者へ請求されます。
排出事業者責任は廃掃法上で「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない(法第 3 条の1)」と表現されています。そのため「他人に委託したとしても、委託先で適正処理できない場合は、委託した側(排出事業者)に責任がある」ということです。
責任追及の方法は、法 第19条第5項及び6項に規定されています。これらの条件に照らして、自らの責任を全うしていることが証明できない場合、”措置命令”として不法投棄された廃棄物の除去等を命じられてしまう可能性もあるのです。
委託業者の不法投棄により排出事業者の社名が公表…。
ブランドイメージを毀損
また、たとえ逮捕までされなくても、不法投棄された廃棄物から排出事業者が特定され、社名の公表がされる場合もあり、ブランドイメージが大きく傷つきます。それは少量の不法投棄でも同様です。
ダイコーの不適正処理(横流し)事件でますます意識される排出事業者責任
食品リサイクル業者ダイコーによる廃棄食品横流し事件、通称ダイコー事件では、多くの食品メーカーが巻き込まれました。本件では様々な議論がなされていますが、環境省HPではこのような資料が公開されています。
ダイコー事件と排出責任―CoCo壱番屋は被害者か?(環境省参考資料)※11ページより
排出事業者責任に関して、汚染者負担の原則という上位概念を絡めて追求しています。
驚くべきは、これが『中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(第4回)』の参考資料として使用、公開されている点です。
ますます厳しくなっていくことが予測される廃棄物処理法の中で、排出事業者責任も例外なく厳格化していくことでしょう。
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