※2016年12月29日執筆時点の情報です。
”不法投棄に巻き込まれたらどうなるか”を解説したシリーズコラム。いよいよ最終回のこちらのコラムでは、実際に排出事業者に罰則が科されるせられる可能性について、過去の事例や昨今の環境省の動きから解説。さらに、廃棄物管理業務の改善を行うにはどうすればよいかをお伝えします。
シリーズのその他のコラムは以下からご覧ください。
第1回:不法投棄に巻き込まれたらどうなるか分かる!排出事業者責任を解説
第2回:立入検査で法律違反が発覚したらどうなる?排出事業者の罰則
立入検査で隠れていたミスが発覚!
不法投棄や不適正処理などの大きな違反に巻き込まれた際の立入検査で、些細な違反が発覚する可能性が高いです。今回は、過去にどのような事例があったのか、会社全体を巻き込んで現状を変えていくにはどうればいいのかをお伝えいたします。
マニフェストの誤廃棄で書類送検された事例も…
まず、お伝えしたいのがこちらです。
● マニフェストの保存義務違反で摘発 書類送検
5年間の保存期限を満了せずにマニフェストを廃棄したとして書類送検された事例です。「内容を把握して帳簿に転記したから必要ないと思った」と判断し、廃棄してしまったということでした。原本が残されていないため、保存義務違反の対象になりました。
細かなミスでは罰則がくだらない”気がする”理由
ただ、「細かい書類のミスで罰則ってあまり聞かないけど…」と思われるかもしれません。そんな気がする理由は、以下の通りです。
理由1:発覚する可能性が低いから
細かな違反は、行政によって日常的にチェックされることはあまりありません。契約書やマニフェストを行政の担当官にじっくりと事細かに見られた経験がある方はそう多くないでしょう。保管基準のように一目見て違反がわかるような部分には、定期的な立入検査で発覚することがありますが、事細かな書類を一つ一つ紐解いていくだけのマンパワーは行政にもありません。
ただ、冒頭でお伝えした通り立入検査によって発覚してしまうため、あまり心強い根拠とは言えないでしょう。
理由2:発覚しても刑事告発をしない場合があるから
違反に対して刑事罰を下すには…
上記のようなステップを踏む必要があります。なかなか大変な道のりです。なので、疑わしい軽微な違反に関しては、行政担当官が違反容疑を発見しても、排出事業者と行政官で、非公式な助言や口頭指導、勧告などに留め、刑事告発を行わない可能性があります。
こちらについても、実際に書類送検されている事例があり、ご自分や自社が安全だと確信するには弱い理由ではないでしょうか?
近年の廃棄物事件でマニフェストが厳格化…。
加えて、マニフェストに関してはダイコー事件の後、規制強化の気運が高まっています。
電子マニフェストの新機能や、電子マニフェスト利用の一部義務化等といった案も出ているようです。しかし、これらの改正を待つよりも一番手っ取り早いのは、現行法で規制されているマニフェスト関連義務違反の取り締まり強化です。
この数か月、各所で検問や立入検査などの結果、細かな違反が発覚したという事例が散見されます。
- 運搬車両に対する検問
産業廃棄物積載車両9台のうち、マニフェストの記載不備が6件発覚(環境省・京都市・大津市合同)
- 立入検査
処分業者がマニフェストの処分終了報告欄に未来の日付を記載し30日間の事業停止処分を受けた(三重県)
報告件数が5年間で約65倍!排出事業者の意識の向上
また、2016年8月2日の「中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(第4回)」において環境省が発表した「マニフェストの勧告・指導等の状況」では、処理会社からのマニフェスト返送が遅れた際等に管轄行政に届け出るの報告の件数が表の通り驚異的に増えています。
各行政からの取り締まり、排出事業者の意識共に、日々高まっていることがうかがえます。
この流れに乗り遅れることは、大きなリスクになり得ます。関連する規制、取り締まりは、厳しくなることはあっても、甘くなることはありません。
参考資料1:廃棄物処理政策に関するこれまでの施策の施行状況より抜粋
会社にとっても大きなリスク~両罰規定と法人重課~
軽微なミスも罰則を受ける可能性があり、取り締まりは日々強化されている。ここまでの内容で「よし、改善しよう!」と思っていただいた方もいらっしゃると思います。ただ、「1人では無理…。」というのが現実ではないでしょうか?
また、実際に不法投棄や不適正処理に巻き込まれたときにはどうすればよいのでしょうか?
兼務で多忙な廃棄物担当者。解決策は?
廃棄物担当者は他業務と兼務することも多く、その業務量も膨大です。どうしても業務が回る範囲でしか考えることができないという現実があります。しかし、多忙を理由に問題を放置して、万が一罰則となれば、その責任を強く追及されてしまうでしょう。回避策は、会社側にもリスクを理解してもらって、周りを巻き込んで改善していくことです。
なかでも、両罰規定と法人重課は、会社にとって大きなリスクですからしっかりと理解してもらう必要があります。
会社に伝えたい2つの大きなリスクポイント
両罰規定
マニフェストの不備といった軽微なミスであっても、両罰規定によって会社も罰則の対象になります。両罰規定とは、違反があった際に違反者本人のみでなく、違反者を雇用する事業主にも罰則が科される規定です。廃棄物処理法では、多くの罰則に両罰規定が設けられています。
法人重課
さらに、上記罰則表で「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科」と記載されている罰則(不法投棄罪)を法人に課す場合には、罰金が3億円以下に上がります。これを法人重課と言います。違反を犯した従業員よりも法人は資力があるので、違反行為による法人の利得や経費節約といったメリットの方が大きくなってしまう為、個人向けの罰金では抑止力が十分でない為、罰金を引き上げているようです。
そしてなにより、両罰規定で会社に矛先が向かう前に、大前提は違反に関与した個人であるということは肝に銘じなければなりません。
環境部門に携わるあなた個人が、罰則の対象となる可能性は否定できないのです。
実際に不法投棄・不適正処理に巻き込まれた!どうすれば?
プロに任せて、被害を最小限に抑える
実際に不法投棄や不適正処理に巻き込まれた場合、最もおすすめの対応はプロへ相談することです。委託業者で廃掃法違反が発覚し、委託していた自社にも立入検査がある…という状況で、マニフェストの記載ミス、廃棄物の管理方法等の過去の事実を修正することは不可能です。
ただその中でも、行政からされた質問に対して、廃掃法を熟知した上で質問の意図や目的を押さえて、回答をしたり、適切に情報を開示することでダメージを最小限に抑えることはできます。以下のような項目で外部の専門家の手を借りることで、万が一の場合に必要な対応が迅速に行える、自社のブランドイメージの毀損を防止できる等のメリットがあります。
逆に言えば、事件発覚後の対応方法を間違えると小さな違反が大きくブランドイメージを毀損する可能性があるのです。
【外部委託するべき事項】
- 危機管理広報
- 自社の置かれている状況把握
- 廃棄物担当部署以外への情報共有
- 事件後の再発防止策の構築
自分や自社だけで抱えこまずに、信頼できるその道のプロフェッショナルに任せることが最も効率よく、被害を最小限に抑える方法です。
お問合せ・ご相談はこちらから
「万が一に備えて、廃棄物管理を整備したい」
「自社の抱える廃棄物リスクの度合いを知りたい」
「委託している処理業者で不法投棄・不適正処理があった…。どうすればいいの?」