2017.03.04
ISOの2015年改訂
移行完了期限は2018年の9月
2015年にISO9001、14001が規格改定されました。そのためISO認証取得している企業は、2018年9月までに認証機関から審査を受け、認証登録を終える必要があります。ISO14001における今回の規格改定の主な変更点は大きく8つ。ISOと経営の一体化に主眼を置いた内容になっています。
・経営戦略レベルでの環境マネジメント、及び事業プロセスのEMSの統合
・トップマネジメントのリーダーシップ及びコミットメントに対する責任の強化
・環境保護の概念の拡張
・リスク及び機会の概念の導入
・環境パフォーマンスの重視
・バリューチェーン及びライフサイクルの視点の導入
・コミュニケーションに関する要求事項の拡充
・プロセスベースのEMS環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引き JISQ14001 発行平成27年11月20日改正/日本規格協会発行
重要なのは経営と仕組みの一体化
上記のようにISOと経営の一体化を重視した改訂が行われた背景としては、ISOを認証取得しているにも関わらず、企業の不祥事が後を絶たない状態を問題視したためと考えられます。
ISOの仕組みを経営と一体化させて、有効活用している企業がいる一方で、実際の業務とISOを切り離して運用してしまっているケースもあります。その理由として、「取得すること・維持すること」が目的となっていることが挙げられます。取引先から取引条件として求められているため“形だけ”の取得となり、使えないマニュアルとして形骸化してしまうことがあります。
最近では、徐々に大手自動車・家電メーカーのISOに関する取引条件が緩和されてきています。かつては、取引するにはISOを取得することが条件となっていましたが、最近は「同等のマネジメントシステム(仕組み)があること」という実態重視の条件に変える企業も増えてきています。
つまり、マネジメントシステムの「認証」ではなく、「運用」を求めていることになります。
“自己適合宣言”という選択
認証機構からの審査に留まらない自主的な取り組み
このような大手メーカーの動きから、ISOを返上して“自己適合宣言”という形式をとる企業が増えてきています。自己適合宣言とは、ISOに基づくマネジメントシステムを自社で構築、運用、適合していることを宣言することです。
ISO14001:2015の序文には以下のような記載があり、“自己宣言“が選択肢としてあることが分かります。
この規格は、適合を評価するために用いる要求事項を規定している。組織は、次のいずれかの方法によって、この規格への適合を実証することができる。
―自己決定し、自己宣言する。
―適合について、組織に対して利害関係をもつ人又はグループ、例えば顧客などによる確認を求める。
―自己宣言について組織外部の人又はグループによる確認を求める。
―外部機関による環境マネジメントシステムの認証/登録を求める。環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引き JISQ14001 発行平成27年11月20日改正/日本規格協会発行
自己適合宣言には次のようなメリットがあります。
自己適合宣言のメリット
- 認証機関の審査にとらわれることのない実務に即した自主的な取り組みが可能になる
- ISOのためだけの事務局業務が大幅削減される
- 通常の認証機関と比べて、費用的にもかなり安くなる
ただし、自己宣言のみで、利害関係者(顧客等)からの理解や信頼を得るのは難しいのではないでしょうか?マネジメントシステムが適合しているかどうかを客観的に確認する必要があります。そのため、「自己宣言について組織外部の人又はグループによる確認を求める」とあるように第三者に適合性を認めてもらうことが一般的です。以下が一般的な自己適合宣言の流れです。
自己適合宣言の方法
~自己適合宣言を認定する第三者機関等による場合の例~
- ISOのマネジメントシステム登録証等の書類から適合できているかどうかを確認
- 実務と照らし合わせて、実際の仕組みとして機能しているかを確認
- 第三者機関による認定がおりる
第三者機関による自己適合宣言は、一度認定されたからといって永久に保証されるわけではありません。多くの団体では、一定期間内にマネジメントレビュー等でその適合性の継続を確認します。そこで、問題がないと判断できれば、認定が更新となります。
この機会に、取引先が求めている条件がISOの認証取得が必須なのか、それとも、同等のマネジメントシステムでも良いのかを確認していただき、“自己適合宣言”も選択肢の一つとしてご検討いただくことをおすすめします。