2017.12.01
※2018年1月25日、続報が出ましたのでコラムの最後に追記しました。
国内最大規模の不法投棄!豊島の産廃、14年をかけ搬出完了
2017年3月28日、香川県の豊島に不法投棄された約91万8000tの産業廃棄物の搬出が完了しました。
搬出作業は2003年4月から始まり、ようやく現場からはすべての廃棄物がなくなった形ですが、搬出後の廃棄物処理は継続しています。
今回のコラムでは、今一度、豊島事件を振り返ります。
そもそも豊島事件とは?
事件概要
●この間、香川県は立ち入り調査を行っていたが、有価物を主張する業者に対して1990年11月までの間、有効な措置を講ずることができなかった。
●不法投棄された廃棄物の量は、約92万tにのぼった。
この事件の背景
本件は、なぜ行政がその行為を認知しているにもかかわらず、長期間にわたって継続され、不法投棄現場の拡大が続いてしまったのでしょうか。
県は、今回の事件が明るみになる前から、100回を超える立入調査を処理業者に対して行っていたと報道されています。
それなのに適切に指導できなかった理由…その1つとして、当時の「廃棄物処理法」があります。
処理業者はシュレッダーダストや廃油、汚泥などの産業廃棄物を、収集運搬、搬入し、処分地内で継続的に野焼きを行っていました。シュレッダーダストは、廃プラスチックを含みますが、廃プラスチックの処分許可はありませんでした。
こうして不法に焼却された廃棄物は、適切な焼却技術を使用せずに焼却されたために重金属やダイオキシン類等に汚染された莫大な有害廃棄物となっていったのです。
しかし、この行いに関する当時の主張として処理業者は「シュレッダーダストを原料として購入し、有価金属を回収・販売…いわゆる『廃品回収』を行っていただけ」と回答していました。
「有価物ではなく廃棄物ではないのか?」という疑問は誰もが持つと思います。しかし、当時の廃棄物処理法では、廃棄物の“おそれがあるもの”について帳簿等を調査する権限は明確には規定されていませんでした。
加えて、廃棄物の認定にあたっては、占有者の意思や有償性などを総合的に勘案する「総合判断説」をとっていました。
そのため、県としては処理業者の一方的な説明を受けるだけにとどまるなど、同社に対して有効な措置を講ずることができなかったのです。
法律上の定義が明確でない為に、処理業者の有価物という主張を、廃棄物と断定し強行な手段に出るには、かなりのハードルがあったのだと考えられます。
しかし、結局は1990年、兵庫県警が廃棄物処理法違反容疑で強制捜査に踏み切ったことにより、終わりを迎えました。
ハードルとなっていた「廃棄物のおそれがあるものについて帳簿等を調査する権限」が管轄行政に与えられたのは、それから13年後の2003年の改正でした。
その後の経緯
処理業者は裁判所から破産宣告を受け、代わりに県が不法投棄された廃棄物の中間処理を行うことになりました。
溶解等を行う中間処理施設は豊島から約6キロ西の直島に建設され、廃棄物の除去及び処理が始まりました。
そして2017年3月28日、豊島に不法投棄された約91万8000tの産業廃棄物の搬出が、すべて完了しました。
かかった費用は膨大で、一部報道では、中間処理施設の建設費、廃棄物等の輸送費、処理費なども含めると、およそ770億円にのぼると見込まれています。
豊島事件を教訓として…
今回、不法投棄された廃棄物を完全に撤去するのに、14年もの年月がかかりました。
しかしこれで終わりではなく、2017年6月12日まで予定されている搬出後の廃棄物処理作業に加え、今後は地下水の浄化作業も続きます。
その作業が完了するまで、県はあと5年はかかると見ており、さらに長い年月と費用がかかることになります。
廃棄物の不法投棄は、それだけ影響が大きく、問題が長期化するものなのです。
また、豊島事件では、多くの排出事業者が違法業者に委託を行っていました。
許可業者であることのみを持って安心せず、実際の処理が適切に行われているのかを確認することで、こうした不法投棄の多くは防ぐことができます。
処理業者が適切な処理を行っているかを判断する基準はたくさんありますので、排出事業者の責任やブランドイメージを守るためにも、委託先を見極め、定期的に確認することは重要です!
【続報】まだ終わっていなかった――地中から新たに汚泥85tが見つかる
2017年3月28日、豊島に不法投棄された約91万8000tの産業廃棄物の搬出が、すべて完了したかに思えました。しかし、2018年1月25日、香川県から新たに汚泥が見つかったと発表がありました。詳細は以下になります。
・汚泥が見つかったのは、地表から約1.5メートル下。
・香川県は、汚泥の性質と状態を確認し、処理方法を検討する。
今まで使用していた無害化処理施設は解体準備中で使えないため、処理方法の検討を急ぐ必要があります。また、(28年度末までの産廃撤去完了を規定した)県と豊島住民間の公害調停に反するのかどうかも注目すべきところです。
加えて、残された汚泥は本当に85tだけなのか、追加調査が必要になります。今後も香川県と豊島の動向に注目です。