2017.11.07
以前掲載したコラム、「廃掃法改正、隠れた“厳格化”の動き」では、近年行われている法改正と併せて、行政の取締りが厳格化している傾向があることをお伝えしました。
最近の行政処分のニュースを見ていても、確実に取締りは厳格化している実感があります。排出事業者の皆さまには、常日頃からの適正管理をより一層確実なものにしていただくことが、最大の備えであることは間違いありません。
その一方で、委託先の行政処分に戸惑う声も寄せられるようになりました。
委託先の行政処分
~効果の高いリスク分散と効果の低いリスク分散~
廃棄物処理業者への行政処分というと、業許可の取り消しや事業停止処分等があり、排出事業者への影響が大きいものもあります。行政処分の影響で取引先がいきなり一定期間営業できなくなったとなれば、その間に委託する処理業者を新たに探さなければなりません。
こうした事態に対する備えとして有効なのは、2社3社の処理業者と常に契約をしておく「リスク分散」が有効です。しかし、この「リスク分散」も昨今の傾向を考えると、効果が高い方法と低い方法があります。
「リスク分散」は委託先の自治体に注目する~三重県の事例~
より効果が高いリスク分散を行うために注目することは、委託先がどこの自治体に管轄されているかということです。行政処分厳格化の動きは、管轄する都道府県や政令市の方針によるものなので、実は自治体によってかなり露骨に地域差が出ています。
例えば三重県では、平成28年から行政処分の件数が急増しています。平成27年は5件でしたが、28年は21件、29年も同様のペースです。
▼三重県の行政処分の件数
参考:三重県HP(http://www.pref.mie.lg.jp/common/01/ci600005204.htm)
傾向として、三重県のように処分が厳格化している自治体は、過去に大きな不法投棄が発生していたり、環境白書等で発表されている不法投棄件数のデータが地域別で下位になっている等の特徴があります。そのため、行政の改善意識が高く、厳格化の動きが顕著になっていると思われます。
平成29年6月22日に行われた、中央環境審議会循環型社会部会(第21回)において、三重県は過去の不法投棄事例と、対策について発表しています。その中でも、「躊躇ない行政処分等」といった、対応強化が伺える内容が目を引きます。
▼三重県の対応
引用:三重県「不法投棄・不適正処理事案に関する対応等について」(http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000746478.pdf)
必要なのは異なる自治体への委託
こうした行政処分の中には、「こんなことで?」と思われるような今まで前例がなかったものや、一般的に軽微だと思われていたりする違反に関しても、自治体によっては容赦なく処分が下されている例があります。
ということは、同じ地域の中でリスク分散をしても、その効果を十分に得られないことになります。取引先が行政処分を受けたため、もう一社の処理業者に出していると、そこも行政処分になってしまった…という可能性があるのです。
そこで、効果が高いのは自治体をまたいだリスク分散です。特に、自社が所属する自治体が行政処分を連発しているような場合には、県外の契約先を持っておくことが必要ではないでしょうか。
県外となると、多少の運搬コスト増があるかもしれませんが、急に廃棄物が出せなくなるリスクを考えると、必要な経費と考えられます。また、県外であっても廃棄物の内容と処分場の得意分野をしっかりと精査することで、処分費を抑えた委託が可能な場合もあります。
今から計画的に対策を取り、将来的には負担が減るような管理体制を作っていくことをおすすめします。