2014.09.13
廃棄物管理の実務を行っていると、これらはどれも日常的に触れる言葉ではないでしょうか?
しかし、どれもなんとなく「法律っぽい」「守らなければいけないもの」という一括りされていないでしょうか?
これらの区別は、基本的な情報でありながら誤解している方も非常に多いです。 そこで今回は、こうした法体系を再確認していきます。
国の規制体系(法律・施行令・施行規則・告示・通知・通達)
法律
まず、もっとも上位かつ中心に位置するのが「廃棄物処理法(法律)」です。
国会の議決を以て、法律として制定されているので一番効力が強く廃棄物に関する決まりごとの最上位です。
しかしこの「法律」というものは、総じて曖昧です。法律で漏れなく規制するのは難しいですし、状況に合わせて柔軟に対応したり、時代の変化に対応するために、具体的ではない文章で書かれています。概念的と言っても差し支えありません。(この傾向がさらに強いのが「憲法」になります)ですので、「解釈」を巡った議論がしばしば起こります。
施行令・施行規則
法律で曖昧な部分を補うのが、「施行令」「施行規則」です。
イメージとしては「施行令」「施行規則」の順番で細かくなっていき、法律の曖昧さを施行令で補い、さらに詳細な部分を施行規則で明確化します。
告示
「告示」も上記2つのように、法律の委任を受けて詳細を定めるものです。
こちらは廃棄物管理においては、埋立基準や分析方法など、技術的な内容を扱います。
これらは法律の委任を受けて規定されているので、違反した場合は法律で定められた罰則に基づいて罰せられることになります。
通知
上記と違い、法的拘束力がないものが「通知」です。
環境省から都道府県知事等に発せられるため、対象は排出事業者ではありません。
「通知」は、行政同士での「助言」という位置づけになります。
それを受け取った上で、判断し法的拘束力を持たせるかは各地方行政の判断に任せられています。ですので、通知が出たからと言って排出事業者がその「助言」にそった行動をする必要はないのです。理由は、都道府県知事が従わない可能性があるからです。
通達
「通知」と「通達」は似ていますが、通知が「助言」なのに対し、通達は上位の行政府(環境省等)から下位の行政府(地方環境事務所等)に向けて発せられる判断基準で、「命令」的イメージです。
「通達」に従って行動する「義務」が発生しますが、これによって国民や事業者を縛ることはできないという点では、「通知」と同じです。どちらも行政同士のやり取りであって、国民・事業者対象ではありません。
「人の振り見て我が振り直せ」ではありませんが、「通知」「通達」を判断基準に自社の管理を改める事業者も多いので、「守らなければいけないもの」と誤解を生むことが多いように見受けられます。
地方自治体の規制体系(条例・施行規則・指導要領)
地方自治体も国会と同じように、県議会や市議会などで条例を定めます。
自治体ごとの独自ルールですので、自治体の中だけに効力があります。
条例の規定に違反した場合も、条例が定める罰則に問われます。
条例の下にも「施行規則」があり、詳細を規定し罰則も適用されます。
先述の「通知」同様に、「指導要綱」や「指導要領」がありますが、地方自治体が自ら作る判断基準や指針です。これ自体に国民や事業者が従う義務はありません。
また、地方自治体は法律の趣旨を逸脱しない範囲で、法律の水準を上回ったり、対象を拡大したりする規制を設けることもできます。
代表的なのが、処分場の実地確認です。法律では努力義務ですが、実地確認を義務付けている自治体は多くあります。これは法律よりワンランク上の規制をかけていることになります。
事業者が行うべきこと
法律やそれに付随する施行令や通知、地方自治体の独自規制について、順を追って説明しましたが、事業者が行うことは何でしょうか?
まず、これらの法体系を知った上で「義務」かどうかを判断することが大切です。
ここが曖昧だと、図らずも「義務」を無視してしまうことになりかねません。
その逆に、「義務」でないことを闇雲にやり続けると非常に多くの労力を消費します。
「義務」は徹底し、それ以外は、内容や自社の状況に合わせて取捨選択をしていくことが重要になります。
法体系をしっかりと理解して、コンプライアンスを守りながら、効率的に管理していくことが必要になります。