2018.12.01
廃棄物の分析をするときに有害物質の溶出量に加えて、含有量も求められることがあります。対象とする廃棄物の種類や、見積依頼をする処理業者によっては溶出分析だけでよかったり、含有分析まで求められたりします。
「以前は溶出だけでよかったのに…」「同じものでも処理業者によって含有までいるのはなぜ?」などと思われることもあると思います。
なぜ、このような違いがあるのでしょうか?
廃掃法で求められるのは溶出量のみ、土対法では含有量も
実は、廃掃法に関して求められるのは溶出量のみです。廃掃法の中の「金属などを含む産業廃棄物の埋立処分に関わる判定基準」では溶出基準のみが定められています。埋立基準なので、排出した廃棄物が最終的に埋立られる時点の基準です。
一方で、土壌汚染対策法における土壌環境基準では、溶出量に加えて含有量の基準も存在します。また、これは第2種つまり、カドミウムや六価クロム、シアン化合物などの重金属に限定されています。
▲第2種特定有害物質 (浜松市 土壌汚染対策法の概要)
埋立基準は、そのまま埋立処分を行うための基準です。埋立処分場は一般に生活環境から隔離され、浸出水は随時モニタリングされ、水処理施設を介してから放流されます。(安定型処分場を除く)
そのため、埋立処分の場合は溶出分析をすれば、ひとまずは問題ないということになります。
含有はリサイクルかつ重金属の場合のみ
では、土壌環境基準はどのような場合に対象となるのでしょうか?
一言で言えばリサイクルするときです。
埋戻材や路盤材など、主に建設資材としてリサイクルする場合、リサイクル後の製品が土壌と直接触れ合い、生活環境圏にも使用されます。そのため、土壌環境基準は廃棄物の埋立基準よりも厳しい基準となります。リサイクルを行う場合にはこの基準を指標としています。
埋立の場合とリサイクルの場合の溶出基準の違いはこちらのコラムをご覧ください。
では、なぜ含有基準は重金属にのみ設定されているのでしょうか?
重金属は溶出試験では検出されにくい
なぜなら重金属は水に溶けにくく、土壌に吸着しやすいという性質があるからです。
(参考:建設技術研究委員会 土壌汚染の調査・対策に関するQ&A集)
つまり、重金属は土壌から溶出しないものの、含有量が多いという場合が想定されます。
これは、試験方法の違いにも表れています。溶出試験と含有試験、両者の違いは大まかに言えば、溶出試験が真水に溶け出るかを調べるのに対し、含有試験は塩酸に溶け出るかを調べます。
例えば、埋め戻しに使われたリサイクル資材に酸性雨がかかると、重金属が溶け出す可能性も捨てきれません。又は、土埃として体内に入ることがあれば、体内の酸に反応して溶け出すということも考えられます。
含有量と溶出量の違いは、背景の違い
処理工程の違いや、分析の目的を考えると含有量と溶出量のどちらを分析する必要があるのかが分かります。(右表を参照下さい)
廃棄物の種類や、処理業者によって求める分析が違うのも、「重金属が含まれる可能性があるか?」や「最終的に埋立なのか?リサイクルなのか?」などの背景があっての事だったということです。